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【中小企業にとっての「手形」】本当になくなるの?

今日の日経朝刊の記事、月曜日の朝ということで大した記事はないのかな?とか思いつつ、2面で見つけた「おお」の記事。

曰く「紙の約束手形、取扱廃止へ・・・」の見出しが目に飛び込んできます。

 

2024までに手形サイト60日以上を規制、2026年に全廃へ・・・と記事にはあります。

それにしても、このタイミングでやや唐突感は否めませんが、記事の中身からすれば、曰く「中小企業の資金繰り対策」なのだそうです。

確かに、世界を見回しても、紙の「手形」なるものはおそらく我が国くらいしか流通していないのでしょうし、営業担当者が25日、月末といった支払日に集金にお邪魔するという昭和型の商慣習は「もうやめとこ」というのはよくわかるし、遠隔地だと「書留」で送らなきゃいけないし、印紙税ももったいない・・・だから電子債権に移行しましょ、というのは至極合理的で、北出も大いに賛同するところです。

そうは言いながら、今から10年程度前でしょうか、「いよいよ、紙の手形がなくなる」、「完全電子化へ!」などとあちらこちらで説明会が開かれていた時期がありましたが、電子債権は何故か広がりを見せず、盛り上がりに欠けたまま終わってしまった感は否めません。

今回は本当に電子化が進むのでしょうか?

 

他方で、手形ならではのいい意味でのモラルと、悪い意味での悪さも同居している点も見過ごせません。

手形は期日に1円でも足りなければ「不渡り」という商売上事実上死刑宣告を受けてしまうので、手形を切る方は、それなりの覚悟が必要です。

つまり、手形を頂くからには、期日にはちゃんと落としてもらえるというのが暗黙の了解なので、頂戴した手形はメインバンクで割り引くことができますし、仕入先に裏書譲渡することもできます。

手形の発行元の信用度が高ければ、金融機関も安心して割引けますし、裏書譲渡を受ける仕入先も同様です。

手形こそ、我が国ならではの「よき信用取引」の象徴なのです。

しかしながら、業種によっては実質的に労務を提供している外注先に、手形を切っているようなケースも未だ存在しており、元請と外注先との暗黙の支配関係が手形の切り方にも反映されているのも事実です。

 

手形に関する最大の問題は、手形の債権債務は、商取引とは別に有効なので、商取引がないにもかかわらず、手形を切り合ってファイナンスをする「融通手形」がこの令和の時代になったといえども、世間では皆無とはいえないのが現実です。

融通手形(融手、ユウテ)こそ、「商取引の麻薬」なのであって、一度ユウテを切り合ってしまったら、もう「やめられない、止まらない」です。

「この厳しい資金繰りを乗り切るためのたった一回だけの悪さ」のつもりが、そもそも商取引でない債務(架空債務)を返済するのは至難の技なので、金額はだんだん膨らんで行きます。

金融機関は金融機関で、ユウテには今でも目を光らせているので、交換所から戻ってきた決裁済みの手形の裏書きをチェックするのは預金役席の重要な仕事です。

ユウテは必ずバレます。

やめられなくなるので、決算書の勘定科目明細の支払手形に仕入先ではない支払先が記載されてしまいます。

ユウテがバレたら、金融機関は一発アウトで、ユウテの解消がない限り(なくなっても)追加の与信は望むべくもありません。

ユウテの片方が不渡りを出したら、もう片方も運命もろともです。

電子債権に完全移行したら、ユウテは本当に全廃できるのかな?とか、考えてしまいます。

 

中小企業経営者の皆さん、いうまでもありませんが、「絶対に、ユウテはあきませんよ」。

その上で、来たるべき電子債権にかこつけて、金融機関からの協力を得ながら経理の紙仕事を全廃して、間接部門のDXを思いっきり推進する絶好の機会にしたいものです。